kubeadmを使用したクラスター内の各kubeletの設定
Kubernetes 1.11 [stable]
kubeadm CLIツールのライフサイクルは、Kubernetesクラスター内の各ノード上で稼働するデーモンであるkubeletから分離しています。kubeadm CLIツールはKubernetesを初期化またはアップグレードする際にユーザーによって実行されます。一方で、kubeletは常にバックグラウンドで稼働しています。
kubeletはデーモンのため、何らかのinitシステムやサービスマネージャーで管理する必要があります。DEBパッケージやRPMパッケージからkubeletをインストールすると、systemdはkubeletを管理するように設定されます。代わりに別のサービスマネージャーを使用することもできますが、手動で設定する必要があります。
いくつかのkubeletの設定は、クラスターに含まれる全てのkubeletで同一である必要があります。一方で、特定のマシンの異なる特性(OS、ストレージ、ネットワークなど)に対応するために、kubeletごとに設定が必要なものもあります。手動で設定を管理することも可能ですが、kubeadmは一元的な設定管理のためのKubeletConfiguration
APIを提供しています。
Kubeletの設定パターン
以下のセクションでは、kubeadmを使用したkubeletの設定パターンについて説明します。これは手動で各Nodeの設定を管理するよりも簡易に行うことができます。
各kubeletにクラスターレベルの設定を配布
kubeadm init
およびkubeadm join
コマンドを使用すると、kubeletにデフォルト値を設定することができます。興味深い例として、異なるCRIランタイムを使用したり、Serviceが使用するデフォルトのサブネットを設定したりすることができます。
Serviceが使用するデフォルトのサブネットとして10.96.0.0/12
を設定する必要がある場合は、--service-cidr
パラメーターを渡します。
kubeadm init --service-cidr 10.96.0.0/12
これによってServiceの仮想IPはこのサブネットから割り当てられるようになりました。また、--cluster-dns
フラグを使用し、kubeletが用いるDNSアドレスを設定する必要もあります。この設定はクラスター内の全てのマネージャーとNode上で同一である必要があります。kubeletは、kubeletのComponentConfigと呼ばれる、バージョン管理と構造化されたAPIオブジェクトを提供します。これはkubelet内のほとんどのパラメーターを設定し、その設定をクラスター内で稼働中の各kubeletへ適用することを可能にします。以下の例のように、キャメルケースのキーに値のリストとしてクラスターDNS IPアドレスなどのフラグを指定することができます。
apiVersion: kubelet.config.k8s.io/v1beta1
kind: KubeletConfiguration
clusterDNS:
- 10.96.0.10
ComponentConfigの詳細については、このセクションをご覧ください
インスタンス固有の設定内容を適用
いくつかのホストでは、ハードウェア、オペレーティングシステム、ネットワーク、その他ホスト固有のパラメータの違いのため、特定のkubeletの設定を必要とします。以下にいくつかの例を示します。
- DNS解決ファイルへのパスは
--resolv-conf
フラグで指定することができますが、オペレーティングシステムやsystemd-resolved
を使用するかどうかによって異なる場合があります。このパスに誤りがある場合、そのNode上でのDNS解決は失敗します。 - クラウドプロバイダーを使用していない場合、Node APIオブジェクト
.metadata.name
はデフォルトでマシンのホスト名に設定されます。異なるNode名を指定する必要がある場合には、--hostname-override
フラグによってこの挙動を書き換えることができます。 - 現在のところ、kubletはCRIランタイムが使用するcgroupドライバを自動で検知することができませんが、kubeletの稼働を保証するためには、
--cgroup-driver
の値はCRIランタイムが使用するcgroupドライバに一致していなければなりません。 - クラスターが使用するCRIランタイムによっては、異なるフラグを指定する必要があるかもしれません。例えば、Dockerを使用している場合には、
--network-plugin=cni
のようなフラグを指定する必要があります。外部のランタイムを使用している場合には、--container-runtime=remote
と指定し、--container-runtime-endpoint=<path>
のようにCRIエンドポイントを指定する必要があります。
これらのフラグは、systemdなどのサービスマネージャー内のkubeletの設定によって指定することができます。
kubeadmを使用したkubeletの設定
kubeadm ... --config some-config-file.yaml
のように、カスタムのKubeletConfiguration
APIオブジェクトを設定ファイルを介して渡すことで、kubeadmによって起動されるkubeletに設定を反映することができます。
kubeadm config print init-defaults --component-configs KubeletConfiguration
を実行することによって、この構造体の全てのデフォルト値を確認することができます。
また、各フィールドの詳細については、kubelet ComponentConfigに関するAPIリファレンスを参照してください。
kubeadm init
実行時の流れ
kubeadm init
を実行した場合、kubeletの設定は/var/lib/kubelet/config.yaml
に格納され、クラスターのConfigMapにもアップロードされます。ConfigMapはkubelet-config-1.X
という名前で、X
は初期化するKubernetesのマイナーバージョンを表します。またこの設定ファイルは、クラスタ内の全てのkubeletのために、クラスター全体設定の基準と共に/etc/kubernetes/kubelet.conf
にも書き込まれます。この設定ファイルは、kubeletがAPIサーバと通信するためのクライアント証明書を指し示します。これは、各kubeletにクラスターレベルの設定を配布することの必要性を示しています。
二つ目のパターンである、インスタンス固有の設定内容を適用するために、kubeadmは環境ファイルを/var/lib/kubelet/kubeadm-flags.env
へ書き出します。このファイルは以下のように、kubelet起動時に渡されるフラグのリストを含んでいます。
KUBELET_KUBEADM_ARGS="--flag1=value1 --flag2=value2 ..."
kubelet起動時に渡されるフラグに加えて、このファイルはcgroupドライバーや異なるCRIランタイムソケットを使用するかどうか(--cri-socket
)といった動的なパラメータも含みます。
これら二つのファイルがディスク上に格納されると、systemdを使用している場合、kubeadmは以下の二つのコマンドを実行します。
systemctl daemon-reload && systemctl restart kubelet
リロードと再起動に成功すると、通常のkubeadm init
のワークフローが続きます。
kubeadm join
実行時の流れ
kubeadm join
を実行した場合、kubeadmはBootstrap Token証明書を使用してTLS bootstrapを行い、ConfigMapkubelet-config-1.X
をダウンロードするために必要なクレデンシャルを取得し、/var/lib/kubelet/config.yaml
へ書き込みます。動的な環境ファイルは、kubeadm init
の場合と全く同様の方法で生成されます。
次に、kubeadm
は、kubeletに新たな設定を読み込むために、以下の二つのコマンドを実行します。
systemctl daemon-reload && systemctl restart kubelet
kubeletが新たな設定を読み込むと、kubeadmは、KubeConfigファイル/etc/kubernetes/bootstrap-kubelet.conf
を書き込みます。これは、CA証明書とBootstrap Tokenを含みます。これらはkubeletがTLS Bootstrapを行い/etc/kubernetes/kubelet.conf
に格納されるユニークなクレデンシャルを取得するために使用されます。ファイルが書き込まれると、kubeletはTLS Bootstrapを終了します。
kubelet用のsystemdファイル
kubeadm
には、systemdがどのようにkubeletを実行するかを指定した設定ファイルが同梱されています。
kubeadm CLIコマンドは決してこのsystemdファイルには触れないことに注意してください。
kubeadmのDEBパッケージまたはRPMパッケージによってインストールされたこの設定ファイルは、/etc/systemd/system/kubelet.service.d/10-kubeadm.conf
に書き込まれ、systemdで使用されます。基本的なkubelet.service
(RPM用または、 DEB用)を拡張します。
[Service]
Environment="KUBELET_KUBECONFIG_ARGS=--bootstrap-kubeconfig=/etc/kubernetes/bootstrap-kubelet.conf
--kubeconfig=/etc/kubernetes/kubelet.conf"
Environment="KUBELET_CONFIG_ARGS=--config=/var/lib/kubelet/config.yaml"
# This is a file that "kubeadm init" and "kubeadm join" generate at runtime, populating
the KUBELET_KUBEADM_ARGS variable dynamically
EnvironmentFile=-/var/lib/kubelet/kubeadm-flags.env
# This is a file that the user can use for overrides of the kubelet args as a last resort. Preferably,
# the user should use the .NodeRegistration.KubeletExtraArgs object in the configuration files instead.
# KUBELET_EXTRA_ARGS should be sourced from this file.
EnvironmentFile=-/etc/default/kubelet
ExecStart=
ExecStart=/usr/bin/kubelet $KUBELET_KUBECONFIG_ARGS $KUBELET_CONFIG_ARGS $KUBELET_KUBEADM_ARGS $KUBELET_EXTRA_ARGS
このファイルは、kubeadmがkubelet用に管理する全ファイルが置かれるデフォルトの場所を指定します。
- TLS Bootstrapに使用するKubeConfigファイルは
/etc/kubernetes/bootstrap-kubelet.conf
ですが、/etc/kubernetes/kubelet.conf
が存在しない場合にのみ使用します。 - ユニークなkublet識別子を含むKubeConfigファイルは
/etc/kubernetes/kubelet.conf
です。 - kubeletのComponentConfigを含むファイルは
/var/lib/kubelet/config.yaml
です。 KUBELET_KUBEADM_ARGS
を含む動的な環境ファイルは/var/lib/kubelet/kubeadm-flags.env
から取得します。KUBELET_EXTRA_ARGS
によるユーザー定義のフラグの上書きを格納できるファイルは/etc/default/kubelet
(DEBの場合)、または/etc/sysconfig/kubelet
(RPMの場合)から取得します。KUBELET_EXTRA_ARGS
はフラグの連なりの最後に位置し、優先度が最も高いです。
Kubernetesバイナリとパッケージの内容
Kubernetesに同梱されるDEB、RPMのパッケージは以下の通りです。
パッケージ名 | 説明 |
---|---|
kubeadm |
/usr/bin/kubeadm CLIツールと、kubelet用のsystemdファイルをインストールします。 |
kubelet |
kubeletバイナリを/usr/bin に、CNIバイナリを/opt/cni/bin にインストールします。 |
kubectl |
/usr/bin/kubectl バイナリをインストールします。 |
cri-tools |
/usr/bin/crictl バイナリをcri-tools gitリポジトリからインストールします。 |